○「男山」がたくさんあるというお話

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、「男山」というお酒は全国各地にたくさんあります。

北海道は旭川の北海男山さん、岩手県の陸奥男山さん、宮城県の伏見男山さん、於茂多加男山さん、福島県の開當男山さん、新潟県の根知男山さんなど、本当にたくさんあります。

なんでそんなにたくさんあるのか。以下私どもで聞いている事を書いてみます。あくまで一説に過ぎませんので、お気をつけください。

室町時代頃までは酒は高価で庶民の口には入りませんでした。奈良県などのお寺で作られていた酒が代表的です。しかし時代が下ってきますと、兵庫県は伊丹のあたりで、庶民でも飲める清酒が造られはじめます。

江戸時代に入ると、伊丹の酒「剣菱」「男山」が江戸の町で圧倒的な人気を博しました。今に伝わる仕込み唄にも「酒は剣菱男山」という一節があるほどで、浮世絵などにも「剣菱」「男山」は頻繁に登場します。

「男山」という銘柄はそのように人気のあるものでしたので、東北など後発で清酒造りを始めた地域では、伊丹「男山」にあやかって、「うちは山形の男山」などと名乗ったものでしょう。ですので「男山」の前には必ず小印(「羽陽男山」なら「羽陽」の部分)が付いています。

「男山」という銘柄自体は京都岩清水八幡宮に由来する名前で、全国各地の「男山」は今も岩清水八幡宮とつながりを持っています。


参考:留仕込み唄

サアヨンセ サアヨンセ ハエ とろりナ ハエ とろりと ヤエ

出た声なれど

ヤレ 声をナ ハエ とられた ヤエ 川風に                

ヤレ 川のナ ハエ 鳴る瀬に ヤエ 絹ヤ織たてて

ヤレ 波にナ ハエ 織らせて ヤエ 瀬に着せる

ヤレ そろうたナ ハエ そろうたと ヤエ 若い衆がそろうた

ヤレ 秋のナ ハエ 出穂より ヤエ なおそろうた

ヤレ そろうたナ ハエ 出穂にも ヤエ おくれ穂がござる

ヤレ この家ナ ハエ 若い衆 ヤエ おくれない  

ヤレ おくれナ ハエ ない衆に ヤエ はやり伴天きせて 

ヤレ やるぞナ ハエ 伊丹の  ヤエ はたらきに 

ヤレ やるぞナ ハエ 伊丹で  ヤエ 今つく留で

ヤレ お酒ナ  ハエ つくりて ヤエ 江戸に出す

ヤレ 江戸にナ ハエ 出す酒  ヤエ 名のよいお酒 

ヤレ 酒はナ  ハエ 剣菱   ヤエ 男山 


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